医療従事者も視野を広げることが、医療事故防止とチーム全体の成長につながる理由

近年、医療現場における医療事故が深刻な問題となっています。その背景には、医療従事者の長時間労働やストレス過多、マンパワー不足などが挙げられます。しかし、これらの問題を解決するためには、単に労働環境の改善や人員増強といった対策だけでは不十分です。

医療従事者一人ひとりが、視野を広げ、より高い視点を持つことが重要です。視野を広げることで、仕事に対する価値観が変わり、モチベーション向上やストレス軽減にもつながります。

インシデントレポートを作成で、医療事故や過誤につながる可能性のある出来事を報告することは、精神的な負担が伴いますが、視野を広げるとインシデントレポートを共有する意義、目的に立ち返り再発防止の取り組むことにつながります。さらに、チーム全体の連携強化や、新たな課題への対応力向上にも効果が期待できます。

視野を広げることのメリット

  • 仕事の価値を再認識できる

ルーチンワークであっても、視野を広げることで、その仕事が社会に与える貢献度や、患者さんの生活に与える影響を理解することができます。単なる作業ではなく、誰かの役に立つ仕事であるという認識を持つことで、モチベーション向上や仕事への意欲向上につながります。

  • ストレス軽減につながる

視野が狭い状態では、目の前の課題に囚われ、また不快に思ったことをぐるぐると考え続け、思考がそこに居続けてしまうことになりがちです。しかし、視野を広げることで、目の前の課題をより広い視点から捉えることができ、問題解決に向けた適切な判断を下しやすくなります。また、仕事以外にも目を向けられるようになることで、気分転換にもつながります。

  • チーム全体の連携強化につながる

それぞれの役割に囚われず、チーム全体の目標を共有し、互いに協力することで、より効果的な医療を提供することができます。また、異なる視点を持つメンバーが意見を交換することで、新たな発見やアイデアが生まれ、チーム全体の成長にもつながります。

  • 新たな課題への対応力向上につながる

医療を取り巻く環境は常に変化しています。新しい技術や治療法が開発される一方で、高齢化や感染症などの新たな課題も生まれています。視野を広げることで、変化に対応するための柔軟性と適応力を身に付け、新たな課題解決に向けた取り組みを積極的に行うことができます。

カンファレンス

ポジティブ感情と医療事故の関係

ケースウエスタンリザーブ大学のアンソニー・ジャック准教授らの研究(1)によると、現実的な事故(リスク)に焦点を当てたコーチングよりも、理想の自己に焦点を当てたコーチングの方が、コーチングを受けた者の行動変容が促進されると報告されました。

また、後者の方が、環境を広く見渡し、新たなテーマを察知する能力が高く、より幸せな感情を体験しており、新しいテーマに対してよりオープンなのだそうです。

これは、ポジティブな感情を持つことで、視野が広くなり、潜在的なリスクを察知しやすくなるためと考えられます。

医療従事者にとって、インシデントレポートを作成することは、決して簡単な作業ではありません。医療事故や過誤につながる可能性のある出来事を報告することは、精神的な負担が伴います。

けれども、ポジティブな感情を持つことで、視野が広くなり、潜在的なリスクを察知しやすくなり、また今起きた事故が未来の事故を防止するよう視野が広がると考えます。

つまり、医療従事者がポジティブな感情を持ち、視野を広げることは、医療事故防止にもつながると言えます。

医療現場における視野を広げるための取り組み

  • 研修や教育プログラムの充実

医療従事者向けの研修や教育プログラムにおいて、仕事内容や医療倫理、チームワークなどだけでなく、視野を広げるための内容を取り入れることが重要です。具体的には、キャリアプランニング、コミュニケーションスキル、リーダーシップ研修などが有効です。

  • メンタルヘルスサポートの強化

医療従事者は、長時間労働やストレス過多などにより、メンタルヘルスの問題を抱えやすい状況にあります。

そのため、メンタルヘルス相談窓口の設置や、瞑想や簡単にできる深呼吸で心を落ち着けることも 今ここにいられるようになる方法の一つですから、ストレスマネジメント研修の実施など、メンタルヘルスサポートを強化することが必要です。

  • ワークライフバランスの推進

仕事とプライベートの両立を図ることは、医療従事者の心身の健康維持に不可欠です。

そのため、しなくても良い慣例で行っている業務がないか真剣に見直してはいかがでしょうか。

業務勤務時間、休暇の取得促進、育児・介護休暇制度の充実など、ワークライフバランスを推進する取り組みが離職予防、人間関係の改善に寄与し、また長期的な人材の確保にもつながり、結果的に医療事故の防止、医療安全につながるのです。

まとめ

医療従事者も視野を広げることが、医療事故防止とチーム全体の成長につながります。医療現場における視野を広げるための取り組みを進め、医療従事者がより働きやすい環境を作り出すことが重要です。

各種セミナーも行っています。問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。

参考文献(1)https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnhum.2023.1128209/full

投稿者プロフィール

緒方智美